【膜】薄膜や基板の分光測定における干渉性判別条件

 先日,膜厚d=32μmの透明フィルム(屈折率n=1.46~1.47)を分光光度計で測定したところ,干渉性の波長域と非干渉性の波長域が混在する珍しい結果を得た.なお分光測定では白色光源を用い、回折格子により分光し、スリットによりバンド幅を切り出している。上記測定ではバンド幅B=40nm@NIR,10nm@VIS(NIRとVISの切替波長=850nm)であった。
 定性的には,基板や膜の光学膜厚ndが波長λより十分大きければ「非干渉性」,小さければ「干渉性」をもつ.またバンド幅Bが大きければ平均化され,見かけ上「非干渉性」となる.
 では定量的にはどんな評価指標で表すことができるのか興味をもったので,以下に見積もってみた.(専門書や論文を探せばどこかに載っていることだと思うが,頭の体操として.)

干渉性有無の目安の定量的な見積もり

■窓関数g(Φ_B)のグラフを以下に示す.このグラフから,ざっくりと,Φ_Bが0.5より小さければ「干渉性」が強く,Φ_Bが2より大きければ「非干渉性」が強い.Φ_B=0.5~2(中間領域)では,弱い干渉性をもつ(または振幅の符号が反転する).

■今回の試料パラメータと測定パラメータを代入して,Φ_Bを,波長の関数として描いたものが下のグラフである.波長1.4~2μmと0.7~0.85μmで「中間領域」となる.なるほど,測定結果でも確かに弱い干渉性を確認できる.
よってざっくりと干渉性か非干渉性かを判別するのに規格化光学膜厚Φ_Bが評価指標になるだろうと考える.

干渉性判別の例

■厚さ0.1mmのガラス基板
薄めの基板試料であるが,バンド幅を大きめに選ぶことで,非干渉性基板とみなせる.バンド幅を小さめに選ぶ(B=4 or 8nm)と,測定波長範囲の一部が中間領域(弱い干渉性)となる.

■厚さ2μmのSi厚膜
厚めの膜試料であるが,バンド幅を小さめに選ぶことで,干渉膜とみなせる.バンド幅を大きめに選ぶ(B=40nm)と,測定波長範囲の一部が中間領域(弱い干渉性)となる.